コラム
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2020年4月1日、民法改正!賃貸借契約の影響は?

         

 

2017年5月26日に民法の改正法案が成立し、2020年4月に施行されることになりました。明治時代に作られた民法が約120年ぶりに見直され、修正された項目は200項目にも及びます。不動産意外にも広いジャンルに当てはまりますが、今回は不動産を住居として賃貸で借りる際の賃貸借契約にはどのような影響があるのか解説します。

 

民法改正で見直された大きな5つのポイント

賃貸借契約に関する改正箇所

①入居中の室内の設備の修繕に関する見直し
②賃貸中に建物が譲渡され所有者が変更された場合の賃料の支払先
③賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化
④敷金に関するルールの明確化
⑤賃貸借契約の保証人についての新ルール

 

①入居中の室内の設備の修繕に関する見直し

《改正前》
室内の設備は貸主の負担で行う。設備に不備や故障が生じた際は管理会社(貸主)に事前に連絡する。修理の手配は管理会社(貸主)が行い、事後報告での工事費の請求は基本認められない。
《改正後》
賃借人の故意過失による損傷は貸主の修繕義務ではないことを明文化。および緊急を要する修繕に関しては賃借人による「修繕権」が認められ賃借人が自ら修繕の手配をすることできる。

①の見直しによって、居住者が建具の不具合や雨漏りなど、急なトラブルが起こった際に借主の判断で修理の手配ができるようになりましたが、入居者が手配した修理会社の修理費が相場よりも高かった。修理できるはずの設備を勝手に交換されてしまった。という修理の請求金額で賃借人と貸主との間でトラブルが起こってしまう懸念があります。

②賃貸中に建物が譲渡され所有者が変更された場合の賃借人の賃料の支払先

《改正前》
賃貸借契約の契約期間中に建物の所有者が変わった場合、その後は誰が賃貸人になるか、新しい所有者は賃料を請求することができるかが規定されていなかった。
《改正後》
賃貸借の対抗要件を備えていた場合に、賃借物である不動産が譲渡されたときは、賃貸人としての地位は、原則として不動産の譲受人(新たな所有者)に移転するという規定が設けられた。また、賃借人に賃料を請求する時は、対象物件の所有権移転登記を備えていれば、新オーナーは賃借人に賃料を請求できると明確化された。

③賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化

東京都内の住居の契約には、2004年に作られた紛争防止条例(賃貸住宅トラブル防止ガイドライン)が適応されています。この書類には、入居者、貸主の退去時の原状回復義務の負担箇所について記載されています。内容は【通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)、および経年変化は現需要回復義務に含まれない】とされています。

《改正前》
民法上では明確にされていなかった。
《改正後》
賃借人は、物件の引き渡し後に生じた損傷について原状回復義務を負うこと。しかし、通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わないことが明記されました。

④敷金に関するルールの明確化

《改正前》
敷金についての明確な規定がなかった。一般的な不動産を借りる際の常識として慣行されていた。敷金返還請求権の発生時期に規定がなかった。
《改正後》
「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と敷金の定義、および敷金返還請求権の発生時期を「賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点」に生じることが明記された。

⑤賃貸借契約の保証人についての新ルール

《改正前》
保証人が保証する範囲は決められておらず、契約者が滞納した賃料という認識が一般的です。
《改正後》
保証人が保証する、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効とする。ルールが新たに設けられました。

⑤の改正によって、賃貸借契約で大きく変わった内容として契約時の保証人の保証内容です。実際にお部屋を借りるときの賃貸借契約の保証人の条件は、契約者と同等の支払い能力が必要とされ、おおよそ月額賃料の3倍の月収が審査基準とされていました。保証人になれる審査基準はおおよそ決まっていましたが、実際に保証人が保証する費用は契約者が滞納した賃料という認識の方が多いと思います。しかし、退去の際に入居者の過失によって壊れた設備など賃料以外にも保証する内容は複数存在していました。今後は、個人(会社等の法人以外の者)が保証人になる根保証契約は、保証人が支払の責任を負う「極度額」(上限)を定めなければ無効となります。また、極度額は○○万円と明瞭に定め、書面に記載することが必要です。
個人が保証人になった際に、次に該当するした時は、保証人の債務は保証の対象外となります。

1.債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき
2.保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
3.主債務者又は保証人が死亡したとき

民法改正前の賃貸借契約は更新後も改正前の民法が適応される?

賃貸借契約に関しても、民法改正の施行日(2020年4月1日)以後に締結された契約には改正民法を適用し、施行日より前に締結された契約には改正前の民法が適用されます。しかし、施行日後に当事者(契約者と貸主)の合意によって賃貸借契約や保証契約を更新したときは、当事者はその契約に新法が適用されることを予測していると考えられ、施行日後に新たに契約が締結された場合と同様に,改正後の新しい民法が適用されます。このように以前の契約について経過措置が定められています。
保証人は、保証について合意更新しない場合には、改正前の保証契約については改正前の民法が適用され続けるようになります。

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リテラ株式会社 代表取締役 加藤 圭一郎

2013年12月、東京都中央区銀座にて、リテラ株式会社を創業。創業前から不動産業界に身を置き、宅地建物取引士として14年のキャリアを誇る。 東京都心を中心に不動産の売買、賃貸、管理並びに仲介、斡旋業務を手掛けている。 また、引っ越しをもっと気軽にすることをコンセプトとした都心の高級賃貸マンションの情報サイト「Litera Properties」の運営をはじめ、不動産に付随した幅広いサービスを展開している。