公開日 2018-03-02 最終更新日 2026-10-05
高層マンションにお住まいの方の中には「自分のマンションで火事が起きたらどうしよう……」「大地震のとき、高層階から避難できるのだろうか」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
高層マンションは実は、法律で何重もの防災設備が義務付けられた、災害に強い建物です。ただしその強さを活かすには、住む人自身が「建物の仕組み」と「正しい避難方法」を知っておく必要があります。
この記事では、高層マンションの防火・防災システムの基本に加えて、「東京とどまるマンション」制度や長周期地震動への緊急地震速報など、2026年現在の最新の制度・知識を踏まえた防災対策と避難方法をお伝えします。
高層マンションの防火システム
高層マンションには、万が一火事になっても被害が広がらないように、法律に基づいた設備や構造が取り入れられています。
スプリンクラーが取り付けられている
消防法施行令により、マンションの11階以上の階には、原則としてスプリンクラー設備の設置が義務付けられています。これは、消防のはしご車が届くのはおおむね10階程度までとされており、それより上の階では建物自身が初期消火できる必要があるためです。
なお、二方向に避難できる開放型の廊下・階段を備えるなど、一定の構造・内装の条件を満たす共同住宅では設置が免除される場合もあります。スプリンクラーがないからといって危険というわけではなく、その分、避難経路や耐火構造で安全性が確保されている、という考え方です。
炎が上の階へ燃え広がりにくい構造
マンションの各住戸はコンクリートの床・壁で区画されており、火災が起きても炎が隣や上下の住戸へ一気に燃え広がらないよう設計されています。バルコニーの手すり壁や庇(ひさし)も、窓から噴き出した炎が真上の階へ回り込むのを抑える役割を持っています。
高層マンションの火災では「建物全体が燃える」ことは考えにくく、出火した住戸とその周辺にとどまるケースがほとんどです。だからこそ、落ち着いた行動が何より重要になります。
非常用エレベーターの設置義務
建築基準法第34条第2項により、高さ31メートルを超える建築物には「非常用エレベーター(非常用の昇降機)」の設置が義務付けられています。これは火災時に消防隊が消火・救出活動のために使うためのエレベーターで、はしご車が届かない高層階での消防活動を支える設備です。タワーマンションであれば必ず備わっており、高層階の火災にも地上からの消防活動が届く仕組みになっています。
火事が起きたときに私たちができること
万が一火事が発生してしまった場合は、「初期消火」「通報」「避難」が基本です。火が小さいうちは消火器での初期消火を試み、同時に119番通報と、大声や非常ベルで周囲への周知を行いましょう。初期消火ができるのは炎が天井に届くまでが目安とされており、それを超える勢いになったら迷わず避難に切り替えます。玄関から逃げる際はドアを閉めて延焼と煙の拡大を防ぐことも、被害を抑えることに繋がります。
煙を吸わないよう、ハンカチやタオルで口と鼻を覆い、姿勢を低くして移動するのも基本です。火災の死因の多くは炎そのものではなく煙によるものとされており、「煙から逃げる」意識が重要です。
避難は必ず階段で。エレベーターは使わない
移動の際には必ず非常階段(避難階段)を使いましょう。火災時にエレベーターを使用すると、停電や電気系統の異常で停止し、中に閉じ込められる恐れがあります。煙は階段状の空間を急速に上がるため、避難の原則は「下へ、地上へ」です。自分の階より上で火事が起きた場合はすみやかに階段で下へ逃げます。下の階が火元で、階段が煙に覆われて降りられない場合は、無理に突っ切らず、煙の来ない場所へ退避して救助を待つ判断も必要です。
玄関から逃げられないときはバルコニーへ
マンションの住戸は、玄関側とバルコニー側の二方向に避難できるよう作られています。玄関側が炎や煙でふさがれたら、バルコニーの隣戸との間にある「隔て板」を蹴破って隣の住戸へ移動したり、「避難ハッチ(避難はしご)」で下の階へ降りたりすることができます。
日頃から、隔て板の前や避難ハッチの上に物置やプランターを置かないことが、いざという時の命綱になります。

火事が発生するとつい慌ててしまいますが、火の特性とマンションの防火システムをあらかじめ把握しておくことで、落ち着いて行動できるようになります。「万が一火事が発生したらどうするか」を家庭内で共有しておくことも重要です。連絡手段や避難経路、消火器の位置と使い方を、日頃から確認しておきましょう。
大地震と長周期地震動への備え
高層マンションの防災で、火災と並んで知っておきたいのが地震、特に「長周期地震動」です。
高層階は「ゆっくり大きく、長く」揺れる
大きな地震では、周期の長いゆっくりとした揺れ(長周期地震動)が発生します。この揺れは遠くまで伝わりやすく、高層ビルやタワーマンションの上層階と共振して、地上より大きく・長く揺れ続けることがあります。気象庁はこの揺れの大きさを「長周期地震動階級1〜4」の指標で表しており、階級3では立っていることが困難になり、固定していない家具が移動・転倒するレベルとされています。
2023年から緊急地震速報の対象に
2023年2月1日からは、長周期地震動階級3以上が予想される場合にも緊急地震速報(警報)が発表されるようになりました。高層マンションの居住者が増えたことを受けた制度改正で、「震度はそれほどでもないのに速報が鳴る」ケースは、高層階の大きな揺れを知らせてくれている可能性があります。速報が鳴ったら、倒れやすい家具から離れ、頭を守って揺れに備えましょう。
また、免震・制振構造のタワーマンションでも室内の揺れがゼロになるわけではありません。家具の固定、キャスター付き家具のロック、食器棚の扉ストッパーなど、室内の転倒・落下対策は高層階ほど念入りに行っておく必要があります。
エレベーターの地震対策も進化している
2009年9月の建築基準法施行令改正により、それ以降に設置されたエレベーターには「地震時管制運転装置」の設置が義務付けられています。これは地震の揺れを感知すると自動的に最寄り階に停止して扉を開く装置で、閉じ込めを防ぐためのものです。
それでも大地震の際は閉じ込めが発生する可能性はゼロではありません。万が一閉じ込められた場合は、非常ボタンやインターホンで外部に通報し、扉を無理にこじ開けようとせず救助を待つのが原則です。最近のマンションでは、飲料水・簡易トイレなどを収めた防災キャビネットをエレベーター内に設置する例も増えています。内覧の際にチェックしてみるとよいでしょう。
「在宅避難」が基本。備蓄は最低3日分、できれば1週間分
2026年現在の東京の防災の考え方では、耐震性のあるマンションに住んでいて自宅に倒壊・焼損などの危険がなければ、避難所へ行かずに自宅で生活を続ける「在宅避難」が基本とされています。避難所の収容力には限りがあり、自宅に住めなくなった方が優先されるためです。新耐震基準の高層マンションは建物自体の耐震性が高く、在宅避難に向いた住まいといえます。
在宅避難の前提になるのが備蓄です。目安は最低3日分、できれば1週間分。水は1人1日3リットルが目安とされています。食料のほか、断水に備えた簡易トイレ、カセットコンロとボンベ、モバイルバッテリーなども揃えておきましょう。普段使う食品や日用品を少し多めに買い置きし、使った分を買い足していく「日常備蓄(ローリングストック)」なら無理なく続けられます。
特に高層階の場合、停電でエレベーターが止まると階段での水や物資の運搬が大きな負担になります。高層階ほど水や簡易トイレは多めに備蓄しておくのが2026年の防災の常識です。
安否確認と日頃の備えも忘れずに
大地震の直後は電話がつながりにくくなります。家族との安否確認には、災害用伝言ダイヤル「171」や各携帯電話会社の災害用伝言板をあらかじめ家族で決めておきましょう。停電時の情報収集用に、モバイルバッテリーや電池式ラジオも備えておくと安心です。
また、お住まいの区市町村が公表しているハザードマップで周辺の危険度を確認しておくこと、マンションの管理組合や自治会が実施する防災訓練に参加して避難経路や防災倉庫の場所を把握しておくことも、在宅避難を成功させる大切な準備です。
「東京とどまるマンション」という選択肢
在宅避難を後押しする制度として、東京都は「東京とどまるマンション」の登録・閲覧制度を実施しています。これは、停電時でも水の供給やエレベーターの運転に必要な最小限の電源を確保できること、防災マニュアルを策定・運用していることなどにより、災害時でも住民が自宅で生活を続けやすいマンションを都が登録・公表する仕組みです。
登録されたマンションに対しては、簡易トイレやエレベーター用防災キャビネット、炊き出し器といった防災備蓄資器材の購入補助(管理組合や賃貸オーナーが対象)も用意されており、2026年も受付が行われています。登録マンションは都のサイトで検索できるため、これからお部屋探しをする方は、候補のマンションが「東京とどまるマンション」に登録されているかを防災力の目安のひとつにするのもおすすめです。内覧の際には、非常用発電機や防災倉庫の有無、管理組合の防災訓練の実施状況なども併せて確認しておくと安心です。
まとめ:仕組みを知れば、高層マンションは災害に強い住まい
高層マンションは、スプリンクラーや非常用エレベーター、耐火区画といったハード面に加え、長周期地震動への緊急地震速報や「東京とどまるマンション」制度など、ソフト面の備えも年々進化しています。
大切なのは、「火災時は階段で下へ」「地震のあとは慌てて外に出ず、在宅避難も視野に」という基本を家族で共有し、1週間分の備蓄を日常の中で続けること。仕組みを知って備えれば、高層マンションはむしろ災害に強い住まいです。
高層階の暮らしのメリットや注意点については、【2026年版】タワーマンション高層階に住む!の記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
リテラ株式会社は、東京のタワーマンション・高級賃貸を専門に仲介しています。非常用電源や防災備蓄の有無、「東京とどまるマンション」への登録状況など、防災面も含めた物件選びをお手伝いしますので、東京のお部屋探しはぜひリテラへお気軽にご相談ください。
リテラ株式会社 代表取締役 加藤 圭一郎
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