公開日 2018-08-06 最終更新日 2026-10-05
賃貸物件の退去時によく起きるのが、原状回復にまつわるトラブルです。
東京都の賃貸には、退去するときの原状回復費用の負担に関するトラブルを防止するための条例「東京ルール(賃貸住宅紛争防止条例)」があります。これから東京で物件を借りる際に適用されるルールであり、知っておくと退去時のトラブルを防ぎやすくなるはずです。
家賃相場が大きく上昇している2026年の東京では、敷金や退去費用といった「住まいにかかるお金」への関心がこれまで以上に高まっています。特に、これから東京へ移り住む予定がある方、都内で賃貸物件への引っ越しを検討している方は、しっかり知っておくことをおすすめします。
ここでは、東京ルールがどのような条例なのかを紹介したうえで、2020年の民法改正との関係や、賃貸物件の原状回復トラブルを防ぐコツを解説します。
東京ルールとは?
東京ルールとは、賃貸住宅に係る紛争の防止を目的とした条例の通称です。正式名称は「賃貸住宅紛争防止条例(東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例)」で、東京都が2004年10月に施行しました。その後も見直しが行われており、2022年5月に施行された改正では、オンラインでの賃貸借契約の普及に対応した運用となっています。
対象となるのは、東京都内にある居住用の賃貸住宅です。宅地建物取引業者が媒介・代理する契約では、重要事項説明の際に、次の4項目を記載した書面(いわゆる東京ルール説明書)を交付して説明することが義務付けられています。
- 退去時における住宅の損耗等の復旧(原状回復)の基本的な考え方
- 住宅の使用及び収益に必要な修繕の基本的な考え方
- 実際の契約における賃借人の負担内容
- 入居中の設備等の修繕・維持管理等に関する連絡先
特に「退去時の原状回復費用を誰が負担するか?」という点は、何かとトラブルになってしまうことが多く、問題視されていました。その対策として作られたこの条例によって、常識の範囲内で使用し、明け渡し時にきれいにして返すことへの注意喚起、また借主が極端に不利にならないためのルールなどが定められました。
この条例の制定により、退去時に原状回復費用を過大請求する悪徳な不動産業者が減少し、入居者が守られやすくなりました。東京都は条例の内容をわかりやすく解説した「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」も公開しており、2022年12月には最新の第4版が公表されています。
参考:賃貸住宅トラブル防止ガイドライン〜概要〜 | 東京都住宅政策本部
東京ルールにおける原状回復の考え方
東京ルールで定める住宅の賃貸借にかかわる項目のうち、原状回復の考え方をピックアップして紹介します。
経年劣化の原状回復費用は貸主が負担
東京ルールでは、通常の使用の範囲内であれば、日照による壁紙の色あせや、設備機器などの消耗(経年劣化・通常損耗)についての原状回復費用は、貸主が負担すると定めています。
どんなものであれ、時間が経てば劣化するものです。賃貸物件に関しても同じで、壁紙や床材なども、時間が経てば劣化します。これが経年劣化です。ポスターを貼った跡や、冷蔵庫やタンスなどの大型家電や家具を設置した場合にできる電気焼けや床の凹みなども含まれます。
この考え方は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)とも共通しています。同ガイドラインでは、経年変化・通常損耗の分は借主が毎月の賃料として既に支払っているものと整理されており、借主が負担する場合でも建物や設備の経過年数を考慮して、年数が経つほど負担割合を減らすという考え方が採用されています。
参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について | 国土交通省
ただ、借主が故意に壊したり、過失で壊したりした場合、その部分に関する原状回復費用は借主が負担しなくてはいけません。タバコによるヤニ汚れも、通常の使用の範囲内とはみなされず、原状回復費用は借主負担です。
入居中の修繕費用も貸主負担

入居中に設備が壊れてしまったり、壁紙が破れてしまったりした場合も、通常の使用の範囲内であれば、修繕費用は貸主負担になります。ただし、これも原状回復費用と同様、借主の故意、過失によって生じた修繕であれば、借主が費用を負担しなくてはいけません。
電球の交換や、排水栓の交換など、比較的小規模な修繕である場合は、貸主に費用の負担を負う義務はなく、借主が自己負担ですることになります。とはいえ、このような修繕を行う義務は定められていないので、借主の自己判断で修繕するかしないか決めることが可能です。
2020年の民法改正で敷金・原状回復のルールが明文化
東京ルールとあわせて知っておきたいのが、2020年4月1日に施行された改正民法です。約120年ぶりの大改正で、それまで判例の積み重ねでしか示されていなかった敷金と原状回復のルールが、初めて法律に明記されました。
まず敷金については、「賃貸借が終了して物件の返還を受けたときに、未払賃料などを差し引いた残額を借主に返還しなければならない」ことが明文化されました(民法第622条の2)。
原状回復については、通常損耗や経年変化について、借主は原状回復義務を負わないことが明文化されました(民法第621条)。つまり、東京ルールや国土交通省ガイドラインが示してきた考え方が、全国共通の法律のルールになったのです。
また、同じ改正で、個人が連帯保証人になる場合には極度額(保証の上限額)を定めなければ保証契約自体が無効になるというルールも導入されています。2026年現在、東京で賃貸借契約を結ぶ際は、「条例(東京ルール)」「民法」「国土交通省ガイドライン」の3つが揃って入居者を守ってくれる体制になっています。
参考:民法改正〜令和2年4月1日から賃貸借契約等に関する民法のルールが変わりました。〜 | 東京都住宅政策本部
関連ページ:2020年4月1日、民法改正!賃貸借契約の影響は?
賃貸物件の原状回復トラブルを防ぐコツ
東京ルールや民法の明文化があるからといって、賃貸物件の原状回復費用にまつわるトラブルが無くなるわけではありません。場合によっては退去時に多額を請求されるリスクも存在します。
ここでは、退去時に請求される修繕費を減らし、原状回復トラブルを防ぐコツを紹介します。
入居時に部屋の状況を記録する
退去時に予想以上の請求をされないために、入居時のチェックは入念に行い、部屋の状況を記録しておくことをお勧めします。
入居時に、もともとある傷や故障個所など部屋の状況を確認し、チェックシートに記入して管理会社と共有するケースもあります。この記入は借主がおこない、「1ヶ月以内に返送する」など管理会社により返送の期日が決まっていることがほとんどです。
お部屋に家具を搬入後は、壁のチェックが大変なので、引っ越しを始める前にお部屋を確認しておくことが重要です。チェックシートのコピーを手元に残しておくのはもちろん、「いつの段階で、どこにどんな傷がある」と分かる写真をスマートフォンで撮影しておくことで、撮影日時とあわせて状況を記録することが可能です。
室内での喫煙はなるべく避ける
室内で喫煙すると、設備に汚れや臭いが付着し、借主負担で修繕費用が発生する可能性があります。
例えば、喫煙したことで、壁紙を全て張り替えるため数十万円の費用が請求されるリスクがあります。壁紙の張替え費用は、おおよそ1平米当たり1,000円〜2,000円ほどが目安とされてきましたが、近年は人件費や資材価格の上昇により張り替え費用も上がる傾向にあり、室内全部となるとかなりの負担です。
できれば室内での喫煙は避け、吸う時は換気扇の下だけにすることをおすすめします。加熱式タバコであっても、臭いや汚れの程度によっては負担を求められることがあるため、油断は禁物です。
ペットを飼育する場合は対策する
ペットの猫や犬を飼育する場合、時に50平米ほどの1LDKで100万円を超える額を請求されることもあるため、事前に対策しましょう。
例えば以下のようなクリーニングが必要となることもあります(金額はあくまで目安です)。
- フローリングの傷がひどく張替えが必要 ※1平米あたりおおよそ7,000円前後
- ドアに引っ掻き傷があり取り換え ※1枚あたり数万円
- ペットのにおいがひどいため消臭代 ※1平米1,000円前後
対処方法としては、室内にカーペットを敷く、事前にドアに傷防止シートを張る、しつけをしっかりする、などがあります。ペットの尿にはアンモニアが含まれていて、放置すると床が変色するため、早めに床を掃除することでも劣化を防げるはずです。
関連ページ:ペット可の賃貸マンションに住む前に把握したい注意点
故障箇所を放置せず、適宜メンテナンスする
賃貸物件の設備の中で、メンテナンスが必要な箇所、故障している箇所は放置せず、早めに対処しましょう。もし経年劣化が原因であっても、ケースによっては借主が修繕費用を負担しなければならないことがあります。
例えば、エアコンが故障して水漏れした場合は、エアコンが設備であれば貸主はエアコンを修理又は取り換える責任があります。しかし、水漏れを放置していたために床のフローリングが腐ってしまうと、これは借主の故意過失となり責任が発生します。
エアコンの故障の多くは、日々のメンテナンス不足が原因になることも多いため、フィルター掃除などの管理にも注意しましょう。設備の調子が良くない時は、管理会社に連絡をして早めの対応をおすすめします。
退去時は立会いと精算内容の確認を
退去の際は、できるだけ貸主側(管理会社など)の担当者と一緒に室内を確認する「退去立会い」を行い、傷や汚れの箇所・原因をその場で共有しましょう。
その後に届く精算書や見積書は、金額だけでなく内訳まで確認することが大切です。経年劣化・通常損耗の分まで請求されていないか、負担割合に経過年数が考慮されているかをチェックし、納得できない項目があれば根拠の説明を求めましょう。当事者同士で解決が難しい場合は、東京都住宅政策本部の不動産取引に関する相談窓口など、公的な相談先を利用する方法もあります。
まとめ

東京ルールは条例ですので、東京都で賃貸契約を結ぶ場合は、必ずその定めに従う必要があります。仮に退去時に、経年劣化による原状回復費用を貸主から請求された場合は、条例や民法のルールに反している可能性がありますので、必ず内容を確認するようにしましょう。入居時の記録と日頃のメンテナンスを心がければ、2026年現在の東京でも、退去時のトラブルの多くは防げるはずです。
リテラ株式会社は、東京のタワーマンション・高級賃貸を専門とする不動産仲介会社です。契約前の重要事項説明や東京ルール説明書の内容も丁寧にご案内していますので、東京でのお部屋探しはぜひリテラにご相談ください。
東京の高級賃貸・タワーマンションはリテラ株式会社へ
リテラ株式会社 代表取締役 加藤 圭一郎
最新記事 by リテラ株式会社 代表取締役 加藤 圭一郎 (全て見る)
- 【2026年版】おとり物件の見分け方は?特徴と騙されないための対策を解説 - 2023年10月6日
- 【2026年版】勝どき駅の住みやすさは?周辺環境や家賃相場をご紹介! - 2022年8月2日
- 【2026年版】再開発が進む街!豊洲に住む魅力とは - 2022年5月12日
- 【2026年版】人形町駅の住みやすさは?周辺環境や知っておきたいことを徹底解説! - 2022年4月28日
- 【2026年版】事故物件とは?見分け方を不動産のプロが解説 - 2022年4月28日









